看護師が偉そうだという愚痴は、介護職者ではよく発生することです。残念ながら、看護師と介護職が対立しているような施設すらあるかも知れません。
同じ施設でチームとしてケアを行うべき看護師と介護職者で、なぜ看護師ばかりが偉そうな態度をとるのでしょうか。
専門職者としての看護師の立場、介護職との違いなどから紹介していきたいと思います。
目次
介護職に対して偉そうな看護師が多い理由
そもそも介護職は介護士と呼ばずに介護職と呼称する場合が多く、看護師は看護職や医療職とは呼ばずに看護師と呼ばれる場合が多いかもしれません。
これは介護の職場においては、介護職には無資格者から有資格者、有資格者でもホームヘルパー二級から介護福祉士までが存在することに由来すると考えることが出来ます。
介護福祉士にも、最近までは現場経験年数による取得が多く、専門教育機関に通ったことのない人も少なくありませんでした。
対して看護師は、都道府県が免許を与える准看護師と国家資格である正看護師が存在しますが、どちらも専門の教育機関に通わなくては取得できません。
看護師は必ず看護学校を卒業しており、かつ研修で病院などで勉強しています。
更にほんの20年ほど前までは介護職者の業務内容も看護師が担当しており、いまだに病院によっては看護師がオムツ交換などを実施します。
療養上の世話を行うという看護師の専門性ゆえに、介護職者の業務内容の多くは看護職者でも対応が可能であり、医療行為の補助という専門性ゆえにその逆はなかなか成立しません。
これらの考えは高年齢層の看護師に根強く、20年以上のキャリアのある看護師の中には介護職者の専門性に関して疑問視する人まで存在し、介護という学問、専門職が生まれて間もないものである弊害であると言えるかも知れません。
詳しく、いくつかの理由について解説していきます。
階級意識のある看護師が多い
看護師は明確に医師の下につく資格であるといえます。医師の医療行為の補助を専門性としており、医師の指示の下で業務にあたります。
当然独自性もありますが、医師の指示の下で独自性、専門性を発揮するといえるかもしれません。
また、国家資格である正看護師とそうでない准看護師でも資格としてのランクが存在します。これは、ホームヘルパーと介護福祉士の関係性に近いかもしれません。
正看護師は昇進によって副院長に就くことも出来ます。婦長は病院内でもそれなりの力を持つことも少なくありません。
医師会や看護師会、大学と病院の関係など、医療業界には独特の世界が存在し、階級意識が高まる要因となっているのかも知れません。
このように、看護師には明確な階級が存在します。
そして紹介した通り、介護職者の業務は看護師の業務内容の一部であると考えている看護師が存在することで、介護職は看護師の下にある資格であると考える看護師が存在するのです。
実際には全く別の学術形態であり、理念も目的も全く別種でありながら、介護職者にそれだけの専門性を発揮する人材が少ないという点も問題かもしれません。
この特徴は20年以上のキャリアのある看護師に特に顕著で、古株の看護師ならば介護職の業務にまで口出しすることもあります。
これは自分が若いころには自分たち看護職者がオムツ交換や入浴介助を実施していたことが原因の一つかもしれません。
看護師は介護の現場を甘く見ている
看護師にとって、主な職場はやはり病院です。介護の現場は病院での勤務を一通り経験した看護師が退職後に働く、第二の現場のような意識がある場合も少なくありません。
急性疾患の対処をすることもなく、血を見る機会も少ない。そんな介護の現場を、甘く見ているケースもあります。
治療を目的とする看護に対し、必ずしも治療することを目的としない介護とでは専門性が異なるにも関わらず、この違いを単純な上下関係にあると考えてしまうのです。
全員がそうであるとは言えず、看護師の高い専門性と医療知識を発揮しながら苦痛なく過ごすために尽力する看護師も存在しますが、このような意識で働く看護師も少なからず存在することで、介護職にとって働き辛い環境となっているケースは少なくありません。
ストレスのはけ口にしている
看護師は介護職よりも命に対して高い責任を負っていると考えている看護師は少なくありません。
その場合は介護士は幸せ、QOLに対して高い責任を負っているはずですが、そこに意識が回らなければ看護師は介護士よりきつい仕事であると考えてしまいます。
この様に考えていしまう一部の看護師は、自分たちより責任が低く、ストレスの小さい仕事をしている様に見える介護職をストレスのはけ口としてしまいます。
認知症ケアで感じるストレスなど、抗うつ剤の投薬によって管理していると考える看護師にとって理解できないものかも知れません。
意識や知識の少ない看護師は、認知症高齢者の言動を自己表現ではなく症状として対応してしまうのです。
- 20年以上働く古株の看護師にとって、介護職の業務は自分たちの仕事の中でも命の危険の少ない部分である。
- 長く病院で働き、一線を退いた看護師が介護施設を第二の現場として転職する場合が多い
- 結果として、介護の現場、介護職者を下に見る看護師が介護の現場で働いているケースが多くなってしまう
全ての看護師がこのように考えるわけではないけれど、全ての看護師が介護に対して正しい認識と理解をしているわけでもないんだ。
どうしても耐えられない時の対処法
看護師の態度に耐えられない場合、大きく分けて三つの対応になります。「上司に相談し、介護職の専門性について理解してもらう」「人に話すことでストレスを紛らわす」「転職する」という対応になるでしょう。
上司に相談し、介護職の専門性について理解してもらう
看護師の態度に対して、どうしても耐えられない時には上司に相談するのが最も簡単に思いつく方法です。
看護師の個人的な性格以上に、介護職が下に見られ、看護師が重宝がられる、介護の専門性が甘く見られるという職場の地盤が原因になっている場合が少なくありません。
例えば介護関係の研修であっても看護師の参加を促し、介護の専門性について認識を深めるような機会を作るなどの対応が望ましいものです。
介護の現場では看護師向けに研修が実施されることも少なく、介護というものに対する正しい理解が進まず、看護と同じように考えてしまっている場合があります。
時間がかかりますが、じっくりと認識を改め、看護と介護の双方で理解が深まっていけば最高の形であるといえるでしょう。
もし介護リーダーや介護主任といった立場で、看護師と介護職の確執を取り除こうと考えている、部下の介護職から相談されている場合には、看護師本人への注意や介護職への聞き取り、面談などの個人への対応以上に、この様な職場単位での関りが大切になることでしょう。
友人や同僚に愚痴を話す
偉そうな態度で接してくる看護師に対する不満を、誰かに話すというのは一つの手段です。
解決することを目的とするならば先輩や上司に話すべきですが、愚痴を漏らすだけでも精神的には楽になるものです。
ここでは、解決することを目的としていないという事をしっかりと意識することが大切です。
聞いてくれるだけでいいんだけど、などと前置きをしてから話せばより良いでしょう。
解決しないことに対して焦りを感じてしまう事になるため、解決しようという強い意志を持って行動することは逆効果になることもあります。これは、上司に相談する場合でも同様です。
言葉にすることで自分の中での認識を確認し、共感してくれる味方がいることで自分が感じている感覚は間違ったものではないという自己肯定感をもつ。
長期的には解決に向けて先輩や上司に相談し、なんらかのアクションをしていきながら、短期的には精神的な苦痛を減らしていくという対応が大切です。
今の職場から転職する
看護師の態度の根本的な理由は、職場全体の考え方や認識になります。
医療的な支援の重要性が高く、かつ介護職員の専門知識が全体的に低い職場や、看護師の中に職場でのポジションが高く影響力のある職員がいる場合など、中には看護師と介護職者の関係是正が難しい体制が慣例化している場合もあります。
環境改善、介護職者の専門性向上の一環として研修を実施したり、ケアカンファレンスなどで看護と介護の相互理解が進むことが理想ですが、全ての施設で取り組まれるわけではなく、むしろこのような取り組みが実施される施設はまだまだ少ないのが現状です。
今働いている職場に変容を求めるのではなく、転職することで次の職場での関係構築に努めるというのも一つの手段です。
看護師が介護職者を甘く見て偉そうにしている施設であっても、転職先でしっかりとした専門性を発揮することで看護師と独自の関係性を構築できるかもしれません。
すでに偉そうにされているという環境を独力で抜け出すよりは、建設的な方法であると考えることも出来ます。
この場合は看護師と上手く付き合う訳だけど、戦うのではなく、上手く付き合わないとね。
戦ってしまえば関係は悪化するし、全てを受け止めていく姿勢は真面目ではあれどストレスが大きいからね。
看護師の態度は看護師個人の性格や考えというより、職場や社会の認識、環境によるものです。
上司へのストレス、いじめについてのテーマでも紹介しているように、精神的に耐えられないときには変容を求めることは難しい場合も少なくありません。
素直に受け止めてしまわずに、転職して自分に合った職場探しをするのもおすすめです。
職場環境を変えることが大切
介護はチームケアです。これは介護職がチームで実施するという意味ではなく、介護、看護、ケアマネなどの専門職者がチームでケアを実施するということであり、専門職者同士での信頼関係、尊敬しあった関係構築が大切になります。
介護福祉士にはチームを求めるという役割が求められ、チームケアにおけるリーダーは介護職者であるべきかもしれませんが、医療と介護の目指すところの違い、介護における看護の立場などを正しく理解している介護職者が少ないことにも問題があります。
看護師の態度に対して不満を漏らすだけではいけません。
本来は看護師の認識を改めてもらい、チームとして円滑に働くことが出来るように環境を整えることが介護職者の役割であるとも言えます。
これらを正しく理解した上で、自分が介護主任などの立場になく、かつ今の職場で介護主任などを目指すことが難しい、それまで働き続けることが苦痛である。
そして今の上司や先輩は看護師の認識改善に対して積極的ではないという状態ならば、転職していしまうのも一つの手段です。
看護と介護の協力し合う地盤が構築された職場に転職する、関係の改善に積極的な上司がいる職場へ転職することが出来れば、看護師の態度に悩まされることはなくなります。
まずはストレスのない職場で介護職としての知識、技術を磨き、ゆくゆくは介護に対する世間の認識、専門職者間での認識を改善していける高い専門性を発揮することで、後進が同じ悩みを抱えないようにしてあげたいですね。
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