プリセプターの期間終了後の不安などは、プリセプター制度のデメリットとしても挙げられるし、転職の上でも参考になることばかりだ。確認してみようか。
プリセプター制度について、ご存知でしょうか。
元々は看護の業界で、先輩看護師が後輩看護師をマンツーマンで指導する制度の事です。
エルダー制度、OJT制度などが近い内容かもしれません。
専門性の高い仕事をする介護の世界では、先輩職員がマンツーマンで教育担当につく職場も少なくありません。
職場の戦力として教育するために、効率的で効果的な教育制度として採り入れられる制度ですが、必ずしもメリットばかりではありません。
転職先を探す時の参考に、今の職場の制度がどういった目的で実施されるものなのかを確認して職場の考えを再認識するために。
今回はプリセプター制度について紹介していきたいと思います。
目次
プリセプターは看護の世界だけじゃない?
プリセプターとは、看護の世界で先輩看護師が個人で教育担当につく場合の呼び方です。二年目の先輩が、一年前の自分の立場から後輩を支えるという場合もあるようです。
紹介したように、エルダー制度という呼び方をする場合もあれば、OJT制度として取り入れている場合もあります。
新人教育担当などと呼ばれる場合もありますが、その本質は個人スーパーバイザーがついてくれる制度であるといえるかもしれません。
スーパービジョンについては社会福祉の現場における専門的教育プロセスとして、聞いたことのある人もいるのではないでしょうか。
専門性が高く、また一つの回答が明示されることのない介護の世界では、教育、養成の難しさは大きな課題です。
また精神的苦痛との葛藤や自己覚知の難しさと向き合うには、ワーカー自身にも精神的な受け皿が必要であるという面からも、スーパーバイザーの存在が大切になります。
自己覚知を通して自分が認知症高齢者に対して我慢ならない気持ちになっているという事、その気持ちが決して間違ったことではないという事を客観的に評価し、その上で認知症高齢者に専門職者として関り、時に感情と反した対応を行うことが出来るようにならなくてはなりません。
この難しい精神的な成長を補佐するのが、スーパーバイザーである先輩職員になるのです。
介護の業界で先輩介護職者が新人介護職者に対してマンツーマンで教育を担当するのは、至極当然の事であると言えるかも知れません。
本来スーパーバイザーはとても難しいことだけど、新人教育制度として安易に取り組まれている側面もあるからね。
プリセプター制度のメリット・デメリット
本来は個人スーパービジョンを通して、新人介護職者を育み、専門職者として養成するための素晴らしい制度であるプリセプター制度ですが、施設によってはデメリットばかりが目立つ施設も少なくありません。
自分の施設ではどのように実施されているのか、転職先で実施されている場合の注意点などが分かるよう、メリットとデメリットを紹介します。
プリセプター制度のメリット
- マンツーマンで質の高い教育、養成が実施される
- 入職間もない時期の職員のメンタルケアを通して離職率の低下に寄与する
- 新人職員の悩みや不満を先輩職員が情報として入手し、職場全体の改善へと繋げることが出来る
- 新人教育を通して先輩職員も自己覚知を進め、より介護職者として醸成する
プリセプター制度のデメリット
- 新人教育をプリセプターの業務として捉えてしまい、他の職員の意識が低下する
- 未熟なプリセプターの場合、間違った教育が実施される恐れがある
- 悩みを聞くなどの精神的な苦痛への対応、介護観の育成、自己覚知の補助などの役割ではなく、業務を教えるという役割だけが重視される恐れがある
- 厳密な教育期間が設けられることでその期間が終了すれば必ず一人前の介護職者であるという認識が広まってしまい、プリセプター期間終了後の研修や教育体制が拡充されない場合もある
- 新人教育を丸投げされることで先輩職員の業務量が増大し、負担になる
- プリセプターとの信頼関係構築が上手くいかずに退職する可能性がある
- プリセプターとばかり親密になり、職場全体での円滑な人間関係の構築が難しくなることがある
ただし誤った認識で即戦力の教育にばかり力を入れている施設だと、デメリットしかないケースもあるよね。
プリセプターが導入されている施設の特徴
プリセプター制度を正しく運営している場合であれば、十分な効果を表すのはプリセプターの期間を修了してからになります。
それまでは先輩職員の負担が増え、人件費や人員を圧迫する制度であり、先輩職員への研修やプリセプターへの手当てなどを実施する場合、決して小さくない負担になるでしょう。
それでも実施しているという事は、それだけ新人教育に力を入れている、人材育成に積極的な施設であるという事が出来ます。
しかしプリセプター制度、マンツーマンでの教育制度を実施している施設は全て素晴らしい施設だと決めつけるのは早計です。
人材育成に職場全体での研修などを実施せず、先輩職員に一任することで実施した気になっている施設や、タイムスケジュールや施設での決まりを教える担当者として扱い、介護職者としての成長ではなく職員としての業務効率を増すための制度になってしまっている施設など、間違った運営がなされている施設も、残念ながら少なくありません。
例えば職場での経験年数や介護福祉士の資格の有無などだけでプリセプターに選ばれ、教育担当者としての研修が十分でない場合や、教育の内容がプリセプターに一任される場合、もしくは実務を教えるにとどまる場合には注意が必要です。
職場全体で新人職員を支え、教育し、頼れる先輩が全員で新人を見守り、育むという環境の方が良い場合もあるのです。
あくまでも「プリセプター制度を設置する立場の人にとって新人教育が大切である」というだけであり、「職場戦力としての素早い成長が好ましいために設置されている」「間違った運営がなされていてデメリットが目立つ」場合もあるのだという点に注意しましょう。
新人介護職が一人前になるために
プリセプター制度が「介護職者として一人前になるために」運営されている施設で働くことが出来れば、それは介護業界で働き続けるために大きな財産になることでしょう。
しかし「早く仕事を覚えるために」運営されている施設では間違った介護を覚えてしまう危険もあり、また人間関係上のデメリットばかりが目立つ嫌な施設である可能性もあります。
介護観を育み自己覚知を進め、介護職者として醸成するためには、自分に合った施設で働くという事が一番であることは間違いありません。
一人の先輩に手厚い教育を受け、その人に何でも質問できるという環境。
職員全員と早期に信頼関係を築き、聞きやすい先輩や頼れる先輩に自分のペースで質問できる環境。
どちらが良いかを見定めて転職するようにしたいですね。
またプリセプター制度について、先輩教育担当との関係や新人との関係で悩んでいるならば、「仕事を覚える」「介護職者として成長する」「教育体制を管理する」といった様々な思惑で実施される制度であるという点を意識するようにしたいものです。
先輩が仕事内容だけを教えようとしているならば、それも一つの考え方であると納得し、相談する相手としては別の相手を探す。
後輩が答え辛い質問や悩みの相談ばかりをしてくるならば、答えを教えるのではなく一緒に悩みながら考え方を見つけていくという立場から、新人の自己覚知を進めることも大切であると意識する。
それぞれの立場についてしっかりと認識するようにしましょう。