感染症は突然やってくるともいえるし、常にそこにあるともいえる。
しっかりと知識をもっていないと、自分も利用者も守ることが出来なくなってしまうよ。
感染症予防は、利用者の命を預かる介護施設にとって重要な責務です。
免疫力と体力の低下した高齢者にとっては、少しの細菌やウィルスが感染源となり得ます。
インフルエンザウイルスは、肺炎の原因菌として肺炎球菌に次ぐ割合であることをご存知でしょうか。
ノロウイルスの殺菌で、アルコールに有効性が認められ始めたことをご存じでない方も少なくはありません。
感染症予防では常に最新の知識を持ち続ける必要があります。正しい知識を持たなければ、嘔吐や出血時に咄嗟に正しい対処をすることが出来ません。
介護職にとって自分を守るためにも利用者を守るためにも大切な感染症予防について、基礎的な知識をおさらいしていきましょう。
介護職が気をつけたい感染症の種類
冬だからインフルエンザに気を付けよう、夏だから食中毒に注意しようというだけの話ではないんだ。
まず紹介したいのは、平成25年3月に厚生労働省が公開した感染症予防マニュアル内で紹介される表です。
(引用:厚生労働省 平成25年3月 「高齢者介護福祉施設における感染対策マニュアル」)
介護施設で気を付けたい感染症、原因微生物には多くの種類が存在し、原因微生物の種類に応じた対策が必要であるということがお分かりいただけるでしょう。
ここでは紹介されませんが、命にかかわるものではないものの強い感染力を持ち介護現場でも身近な細菌には白癬菌なども存在します。
死亡率の高い肺炎球菌も取り上げられていません。
どれか一つに気を付けるのではなく、常に感染予防を意識した行動が必要であると言えます。
感染してしまったらどうなる?
ノロウィルスによる死者も過去十年報告されていないけれど、ここには嘔吐物で喉を詰まらせたり脱水症状を起こしたりといった間接的なものは含まれていないんだ。
介護施設で感染症予防が叫ばれ続ける理由は、高齢者の身体が免疫力も体力も低下している為です。
子供なら集団感染で学級閉鎖になるだけのウィルスでも、高齢者では死者が出る事態に発展することもあるのです。
そのような事態を回避するために介護施設では感染症予防に取り組んでおり、そのために職員の感染症予防が何よりも大切なのです。
基本的に、施設入所者である利用者が外部の人間と接する機会は大部分が職員です。
自分の不注意、知識不足が大切な利用者の命を奪う事すらありえるという意識を常に持ち続けなければなりません。
そこまでするのは窮屈かもしれないけれど、それくらいの意識で毎日過ごさないといけないという気構えはしてほしいね。
自身で出来る感染症の予防
感染症予防の原則を意識して、休日であっても過ごさないといけないよ。
介護施設における感染症予防では「持ち込まない」「持ち出さない」「広げない」という三原則がよくスローガンなどに取り上げられます。
厚生労働省発行のマニュアルにおいても紹介され、分かりやすい図が作成されています。
(引用:厚生労働省 平成25年3月 「高齢者介護福祉施設における感染対策マニュアル」)
この図でも分かるように、持ち込みさえしなければ施設内で感染症が流行することはありません。
面談の家族や友人、外部ボランティアなどで持ち込まれる可能性もありますが、なんといっても職員がもっとも頻繁に出入りすることになります。
同時に、この三原則はあくまで「感染経路を遮断する」ためのものであるということも理解しなければなりません。
感染症予防では他に「感染源の排除」と「宿主となる人の抵抗力を向上する」ことが大切です。
感染症対策においてはこれら原則の全てが大切ですが、中でも介護職者として重視したいのは「感染源の排除」です。
例えばノロウィルスでは、非常に感染力の高いウィルスが吐しゃ物などから空気中に飛散することで、経口感染を感染経路とするウィルスでありながら、吐しゃ物から離れた位置でも感染する危険があります。
感染源を排除すると時の正しい対処としては吐しゃ物にペーパータオルなどをかけて飛散を防いだうえで、次亜塩素酸ナトリウムを振りかける対処が正解です。
ペーパータオルをかけずにスプレーなどをすると逆に感染を拡大させる事になります。窓を開けて換気しながら、吐しゃ物の周囲の広範囲を消毒しながら拭き取ります。
当然、吐しゃ物への対処時にはガウンを着用し、ガウンテクニックと呼ばれる汚染面に触れない脱着法を心得ていなければなりません。
インフルエンザは身近なウィルスだけど、マスクの繊維を通過してしまうサイズの小さなウィルスだって知っていたかい?。
感染予防ではくしゃみなどの飛沫感染を防ぐのが本来の目的だね。満員電車に乗るような環境では決して無意味なんかじゃないよ。
介護職として働く上で感染症の知識は必須
感染経路の遮断の為に正しい手指消毒に関する知識、いざという時の感染源排除の知識、抵抗力を増すための生活全体での知識、全てが大切だね。
白癬菌は水虫の原因菌であり、足などに付着しても24時間以内に洗浄すれば感染を防げます。
石鹸で洗うだけで効果がありますが、傷があるなどで感染しやすい環境では12時間程度で感染する場合もあります。
C型肝炎は最近では簡単に感染するものではありませんが、高齢者では昔の病院治療で感染している場合も少なくありません。
新規に感染する危険は原則的にはありません。血液の取り扱いには注意したいですが、血を舐めるようなことがなければ感染が広まることはありません。
まずは施設などで作成されているマニュアルをしっかりと確認し、可能であれば覚えるまで読み込む。
更に厚生労働省発行の感染予防マニュアルなども参考にしつつ、最新知識についてはネットなどでも情報を収集する。
命を預かる介護職者として、常に正しい知識と心構えで準備しておくようにしましょう。
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