じゃあ、今回はケアマネの独立について考えてみよう。
目次
ケアマネが独立する上での注意点
ケアマネが独立する場合、居宅介護支援事業所を設立することになります。
居宅介護支援事業の人員基準は管理者と介護支援専門員を最低1名ずつですが、これは一人で兼務する形になるでしょう。
1人で一つの事業所として自由に活動が可能な点から、独立を検討する方が多いと言えます。
居宅介護支援事業所は個人事業主では運営できないので、社会福祉法人や株式会社といった法人を設立する必要があります。
社会福祉法人で運営するならば、社会福祉事業を行うことを目的とし、役員の設置や建物は賃貸ではいけないなどの規定があります。
事業の内容や運営、人員などに厳しい基準がありますが、法人税が非課税など税制面で優遇されます。
株式会社は設立・運営で社会福祉法人程に規約や規定がない点で有利ですが、税制面では社会福祉法人のように優遇されません。
その他の法人も含めそれぞれにメリットもデメリットも存在しますので、専門家などに相談し、ご自身の資産や今後の運営方針などもよく検討し、法人格の取得を行う必要があります。
一人でも可能とはいえ立場は一般的な居宅介護支援事業所と同じになるし、当然居宅介護支援事業所としての運営基準などに則って運営することになるよ。
独立後のケアマネの平均年収は?
居宅介護支援事業所でケアマネとして活動する以上、居宅で生活する利用者に対してケアマネとしてサービスを実施することになります。
ケアプランを作成し、ケアプランで位置付けたサービス事業所とサービス担当者会議を実施。
モニタリングを行い、必要に応じてケアプランの見直しなどを行う。給付管理も行います。
さて業務の内容は一般的なケアマネとなんら変わりませんから、これらによる収入は介護報酬に依存します。
厚生労働省の「居宅介護支援・介護予防支援の 基準・報酬について」で非常に分かりやすいデータがあるので、そちらをご紹介いたします。
単純に言えば、要介護3以上で認知症の方だけを40人担当した場合、1300×40で52000点と認知症高齢者へのケアマネジメントによる評価150×40で6000点で580000点。
地域によって1点は10円前後で比率が決まっていますが、10円としてしまえば58万円が介護報酬です。
そこから経費や減算を計算したものが、給料のベースになるでしょう。
1人で地域の要介護度3以上の認知症高齢者を40人担当し、かつサービス担当者会議や居宅訪問を間違いなく実施するという内容ですので、これは理論上の最高額と言えるかもしれません。
実際には管理者としての業務もあり、そんなことは困難でしょう。
無理に実施すれば、入退院が少し重なるだけで立ち行かなくなるかも知れません。
また介護報酬や加算が見直されればそれによって変動しますし、初回利用者があれば増額し、施設への入所などで減額もします。
そんな訳で目安は出し辛いけど、ある程度自分で担当件数などをコントロールして給料を考えていける点こそが独立するメリットと言えるかも知れないよ。
ケアマネが独立に必要な資金
ここでは金額より項目に絞って、少しだけ紹介しようかな。
1)法人の設立にかかる費用
株式会社や社会福祉法人など、なんらかの法人格を取得する必要がある以上、そこに必要な費用があります。
プロに相談などをせず、一つずつ自分で調べながら行えば削減できるかもしれませんが、書類の準備や申請などで全く費用がかからないという事はないと考えた方が良いでしょう。
2)事務所や備品の準備費用
プライバシーを守った面談室や事務手続きを行うパソコン、電話回線などが整備された事務所を準備しなければなりません。
すでに所有しているものを使用するなどで削減できる項目ではありますが、それでも多くの場合に一番資金が必要となる項目となるのではないでしょうか。
3)居宅介護支援事業所として指定申請
法人を設立し、事務所も準備できれば、居宅介護支援事業所として事業を始める申請を行います。
ここでも非常に難しい書類の準備が必要となりますので、プロや経験者の力を借りた方が現実的です。書類の準備自体にかかる費用も発生するでしょう。
4)利用者獲得までの期間の蓄え
福祉事業を運営する上で利用者獲得という営業的な考え方はふさわしくないかもしれませんが、例えば初月に一人しか利用者がいない場合収入は一万円前後です。
十分な蓄えがなければ、事業所として運営が安定するまでの間に生活が立ち行かなく危険もあるため、事前に準備しなくてはならないでしょう。
一人で、働きながら準備をすることも難しいだろうし、やっぱり資金は必要だよ。
今は開業相談を実施するサービスも少なくないから、具体的な金額としてはやっぱり相談してみるのが一番だね。
ケアマネが独立するメリット・デメリット
メリット
- 担当する件数や訪問の件数、訪問にかける期間などを自分でコントロールすることが出来る
- ケアプランの内容を考える時、所属する事業所や施設を気にせず、本当に利用者にとって最適なサービスを考える事ができる
デメリット
- 1人で運営する場合、管理者としての業務も実施する負担が発生する
- 利用者の獲得や新規にサービス提供先としてケアプランに位置付ける事業所とのやり取りなど、高いスキルが求められる
ということは、実際に特定の事業所を優遇するケアプランを作成する事例もあるということだ。
でも、実際には他事業所と併設する居宅介護支援事業所ではそうした“しがらみ”もあるということだ。
担当件数を上司に決められて、自由に訪問して話を聞ける時間も少なく、ケアプランの内容には無言の圧力がかかる。
そんな“しがらみ”に捕らわれず、真に利用者本位のケアマネジメントを行いたいというケアマネだけが独立できると、僕は思う。
独立に当たって読んでおきたい本
真剣に検討するなら関連する法律は当然全部と、近年の厚生労働省調査は押さえておきたい。
多職種連携に関しては論文や学術書も多数あるから…後は…。
介護に関する起業を学べる1冊
訪問介護事業居宅介護支援事業成功の法則: 勝ち残る方程式/知らないと損をする起業のコツ
訪問介護事業所と居宅介護支援事業所の運営はもちろん、介護サービスを数的に考える管理者としての考え方、経営者としての考え方についてよくまとめられているね。
介護保険に関しても、状況の変化を経営者の視点で考えているから、ケアマネから経営者になっていくなら参考になるよ。
運営基準や情報公表制度が学べる1冊
経営者として現場レベルで必要になる知識が分かりやすく書かれていて、かつ考え方や必要性の視点から語られている。
訪問介護、通所介護で役に立つ本だけど、当然居宅介護支援事業所についても長く使える一冊だね。
介護事業所のPDCAが実践できる1冊
介護事業所に人が集まるPDCA仕事術: 業務がぐんぐん効率化
でも押さえておきたいのは事業所の運営、ケアマネとしての業務効率や業務内容のスキルアップ、そして自分だけで行うことになるサービス事業所や病院との連携かな。
福祉である以上全ての仕事には直接関わる相手があり、より質が高いケアマネジメント、専門性はもちろん、管理者として人間的にも高いレベルが求められる。
やって失敗しましたでは、利用者に負担がかかることが、一番忘れてはいけないポイントだからね。
ケアマネの独立は一つの働き方としても確立していると言えます。
そのため噂を聞く機会も多く、考えたことのある人も多いでしょう。
実際には法人の設立から一人で行うため困難な道のりで、大成功しても50万円-経費という給料ですから、場合によっては給料面でも大きく有利なものではありません。
しかしながらイメージを固めて、リスクをしっかりと把握した上でも独立を検討するなら、それは素晴らしい事です。
自分のペースで無理をせず良いケアプランを作成し、深く親身に関わりたい。
高い志が無ければ難しい独立ですが、地域の高齢者の味方になれる素晴らしいケアマネを目指して、ぜひ頑張ってください。
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