腰痛は、介護職者の職業ともいうべきものです。コルセットを巻いて業務にあたる介護職者や整骨院に通う介護職者は少なくありません。
この記事では、腰痛・ヘルニアについて、予防策を紹介したいと思います。
目次
腰痛・ヘルニアは介護士の職業病?
腰痛は、介護職者の職業病と言われることが多いです。
移乗介助や入浴介助などは当然ながら、会話するだけでも目線を合わせるために中腰になることもあるのが介護です。
意外と思われる方もいるかも知れませんが、介護職は記録を記入する短い時間以外は座る機会も少なく、担当業務によっては一日たちっぱなしの場合もあります。
もちろん下肢筋力の衰えた高齢者への移乗介助などでは人を一人抱えるだけの負担がかかります。腰痛は、介護職者の職業病と言えるでしょう。
腰痛になってしまう原因
介護技術が未熟である
介護技術、中でもトランスファーと呼ばれる移乗介助を行う際には、守るべき原則があります。
ボディメカニクスの原則
- 重心を近付ける
- 体を小さくまとめる
- てこの原理を活用する
- 支持基底面席を広くする
- 重心を低く保つ
- 水平に移動する
- 大きな筋肉を使う
- 身体をねじらない
- 手前に引く動きで介護を行う
ボディメカニクスは利用者にとって安全な介護であると同時に、介護者にとって負担の小さい介護を行うために非常に重要です。
腰痛になる大きな原因は、人ひとりを無理な体勢で抱え上げようとするためです。
ボディメカニクスをしっかりと意識できていない介護を行う事で、腰痛になってしまう介護者は少なくありません。
身体的な特徴
ボディメカニクスを十分に活用した介護を実施した場合でも、腰痛になる場合はあります。
その原因の一つは個人の身体能力、身体的な特徴です。
入居者の身体を小さくまとめて十分に身体を近付けたとしても、利用者の体重が重くて介護者の体重と差が大きい場合、重心は利用者の側になります。
てこの原理で考えた場合、支点となる介護者の身体と力点である全体の重心が離れているだけで負担が大きくなります。
逆に言えば、体重が介護者に有利だからこそ十分に身体を近づけていれば支点と力点が限りなく近付くことで水平移動で負担なく介護が出来るのです。
大きな筋群を使う事で負担を小さくする場合でも、一般的な男性の三角筋や腹筋、大腿筋の発達とスポーツ経験の特にない女性の同じ筋肉の発達では大きな違いがあるのです。
身体の小さな女性介護者などは、それだけで腰痛に悩みやすいと言えるのかもしれません。
身体介護の量が多い
ボディメカニクスをしっかりと活用し、大きな筋肉については十分に発達している、身体的に不利というほど小柄でない場合でも、過酷な業務量で腰痛になる場合はあります。
そもそも下肢筋力低下が著しい場合や両下肢に麻痺がある場合には、体重全てを介護者が支える介護になるため一人介護は適切でありません。
しかし介護の現場では一人介護が当たり前に実施されていますし、介護職者一人当たりの負担は大きくなっています。
二人介護の実施などによって身体介護の負担を軽減することが出来なければ、根本的には改善しない場合もあります。
腰痛になった時の労災について
労災が使用できるかの判断は個別ケースになりますが、一般的には「突発的な災害性の出来事が原因でない」場合に労災が使用できます。
業務期間や業務内容によって認められない場合もありますが、介護職者として働く場合には労災が認められるケースが多くなっています。
腰痛になった、腰に違和感がある場合には、市販の湿布薬やサポーターを使用する前に病院に行ってみるべきでしょう。
この時に労災保険指定医療機関にかかるようにして、指定の用紙を提出することで労災として治療費用が掛からなくなる場合もあります。
詳しくは会社や事業所、労働基準監督署などに問い合わせましょう。
休職する場合でも解雇にはならず、給与は労災から支払われますし、通院だけならば一切職場に迷惑をかけません。
通院せずに堪えている時に、職場外で事故にあったりすると結果的に自分にも職場にも大きな負担になってしまうよ。
腰痛にならないための予防策
頭では分かっていても、実施できるかどうかは状況や技術の高さによるからね。
介護福祉士として身に着けるべきであるとされる介護技術は、利用者にとって安全な介護を実施するとともに介護者にとって負担の少ない介護を実施する為のものです。
ボディメカニクスを暗記するだけでなく、実施できなければなりません。
ボディメカニクスの原則の中でも、「身体を近づける」という原則については特に注意しましょう。
恥ずかしさや密着することへの嫌悪感などから十分に身体を近づける事の出来ていない介護職者は少なくありません。
全介助を必要とする立位がとれない高齢者を身体から離れた位置で介助するという事は、重い荷物を腕を伸ばした状態で上げ下げしているようなものです。
一般的に重たい荷物を運ぶ際には腰などの低い位置で身体に密着させます。重さや安全性だけを考えるならば、十分に密着しており重心も低くするためには非常に重要な内容です。
しかし利用者も人間であり、他人と不必要に密着したいと考えてはいません。
利用者が不快にならず介護者と利用者を合わせた重心が十分に介護者に近付くようにするためには、高い技術とは別に介護に対する心構えが必要になるのです。
大きな筋群を使うことが出来れば大腿筋や腹筋の動きで介助が出来るため、背中の脊柱起立筋群への負担は軽減します。
抱え上げるという動きを減らし、水平に移動することで全身への負担は減るでしょう。ボディメカニクスを活用することは、腰痛予防の一番の手段です。
介護技術を向上する以外の手段を検討しよう
介護技術を向上し、ボディメカニクスを活用した介護を提供している場合でも、腰痛に悩まされることはあります。
体格的に不利な場合や介護業務がハードであれば、介護技術を活用した介護を実施していても負担は大きなものになります。
ボディメカニクスを活用した介護でも負担がゼロになるわけではなく、小さな負担であっても積み重なるものでもあります。
腰痛に悩まされる場合、介護技術を向上する以外の手段を考えなければなりません。
腰だけではない、大きな筋肉のトレーニングを行うことで負担を軽減することが出来るでしょう。
人の身体は自然と大きな筋肉を使って最高効率の動きを使用とするため、腹筋や肩回りの筋肉、大腿筋のトレーニングは効果的です。
腰痛は筋肉の不調である場合が多く、血管が細くなると腰痛は増強します。ストレスや飲酒、喫煙などの習慣も腰痛の一つの原因であると言えます。
入浴時にしっかりと温め、入浴後にストレッチをすることで血行を改善して老廃物の蓄積をリセットするのも大切です。
それでも腰痛が改善しない場合、業務内容がハードであることも原因かもしれません。
身体介護が少ない施設への転職、人員配置が多く二人介助が実施されている転職というのが最終手段になるでしょう。
腰痛と上手く付き合う方法を考えて欲しいな。
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