介護リーダーは介護職にとって最も身近な上司です。同時に、長く務める場合目指すべきポジションでもあります。
介護施設の施設長やエリアマネージャー、介護事業部長などの役職が介護職員から輩出されるとは限りませんが、介護リーダーだけは確実に介護職者から選ばれます。
介護リーダーや介護主任など呼ばれ方に決まりはなく、設置の義務がある役職という訳でもありませんが、多くの介護施設で設置されているポジションである介護リーダーについて。
介護リーダーになるためにも、介護リーダーとして転職するためにも、また介護リーダーとして働いている方に参考になる内容をお伝えしていこうと思います。
目次
介護職のリーダーに求められていること
介護における職員の配置は、配置基準に準じて行われていると言えます。
職員の配置人数や専門職者の配置など、施設を運営する為には満たさなければならない人員の基準が細かく設定されています。
しかし、一般的な介護施設においてリーダー職の配置は基準化されていません。
ユニット型の施設においては研修を修了したユニットリーダーを配置する義務がありますが、有料老人ホームやユニット型でない特養などでは、介護職員にリーダーを配置する義務はありません。
それでも、多くの介護施設で介護リーダーが配置されている理由は必要だからです。
このことから、介護リーダに求められるのは介護職員としての技術や知識ではない、リーダーとしての高い能力であると言えます。
介護職員としての知識や技術の高い人員全てをリーダーとするわけではありませんし、それではただの給料が高い代わりに高い能力が求められる職場です。
当たり前のことですが、この部分をしっかりと理解することが大切です。介護リーダーは施設や法人にとって、運営の為に必要な人員であるから配置されるのです。
では、施設・法人は何を求めているのかを確認していきましょう。
役介護リーダーとしての役割
ユニット型の施設におけるユニットリーダーは研修を修了したもので常勤一名をユニットごとに配置する物です。
ここでの介護リーダーとは介護職員全体で一名、サブリーダーや副主任という立場が設定されている場合でも、全体で2~3名だけ配置されているものを指していると考えてください。
その場合、介護リーダーの役割とは、正解のない介護に一つの正解を設定できる知識と、介護職員をまとめることが出来る指揮力です。
介護施設は介護を提供する施設であり、介護とは日常生活における世話の全てです。自立支援、自己決定の尊重は介護にとってとても大切な介護の要素です。
これらをただ鵜呑みにすれば、寝たいと主張する高齢者が寝続ける世話が介護になってしまうかもしれません。
これが間違いであることは明白で、生きたい、健康に過ごしたいという隠されたニーズを充足するために、部屋から出て食事をするように促します。
では、寝たいと主張する高齢者に運動させることで、健康に過ごさせることは介護なのでしょうか。
結論として、恐らくどちらもが正しく介護です。そしてどちらもが間違った介護なのです。
この中間に施設の方針である目指すべき介護を設定し、職員全体で共有しなければ介護は上手くいきません。
ある職員は寝ていても良いと言い、別の職員は無理やり起こしてリハビリをさせる施設では良い介護は提供できません。
正しい介護知識をもち、介護職員をまとめるリーダーが配置されなければ、少なくとも介護施設は上手く運営することは出来ないのです。
だからこそ、あらゆる介護施設で介護リーダーが配置されるのです。
介護リーダーの条件・資質
介護リーダーの役割は介護職員全体で共有する目指すべき介護を設定する事であるとお伝えしました。ここから、介護リーダーに求められる条件、資質が分かります。
介護リーダーに求められる資質とは、介護職員をまとめて指導が出来る能力です。ただ注意できればいいのではなく、介護職員を指し導くことが出来なければなりません。
その場合に必要な条件は、介護力とでもいうべき総合的な介護の知識と技術、そして最低限の求心力を持っていることであると言えるでしょう。
先ほどの例でも、寝たいと主張する利用者の病歴や身体機能、前日の体調、性格的特性、生活歴などを深く理解しなければ、説得力のある介護を設定できません。
嫌だというなら寝ていてもらえばいい、運動すべきだと医師が言うのだから起こさなければならないと判断するようでは、納得して介護職員がついてくることはないでしょう。
そして、説得してリハビリに参加してもらうのでという介護を目指すべき介護に設定するのならば、介護リーダーにはそれを行う能力が無ければなりません。
高い知識と技術、これらは介護リーダーを務める上で当たり前でありながら、最も重要な条件です。
そしてその高い能力を自慢するのではなく、介護職員の中で鼻つまみ者になることのない、最低限の求心力が必要です。
どれだけ正しい主張が出来ても、誰も聞かなくてはただ能力が高く主張が激しい介護職員になってしまいます。
これらの能力を担保するのが介護福祉士です。
厚生労働省の意見として、介護職のキャリアパスにおける介護福祉士は現場でリーダーが出来る知識と能力、新人に指導が出来る能力を有する者であるとされています。
介護福祉士に求められる能力を十全に発揮できることが、介護リーダーに求められる条件と資質であると言えるでしょう。
介護職のリーダーの本当のところ
介護職の多くの仕事とは違い、介護リーダーには法的に設定された役割があるわけではありません。
それは多くの仕事にとって当たり前のことですが、介護職の世界では珍しい事であると言えます。
だからこそ、介護リーダーに就任してから困る人は少なくありません。
介護リーダーの辛さからリーダーが転職してしまい、引継ぎもなしにリーダーに選任されることもあるかもしれません。
介護リーダーを目指すためにも、また介護リーダーとして働くためにも、介護リーダーの実際について理解しておきましょう。
介護リーダーの給料
給料は職場ごとの介護リーダーの位置づけにより様々です。手当が5000円でボーナスの増額が大きい施設もあれば、手当一万円だけという施設もあります。
それだけに具体的に金額を示すことは難しく、基本給が低い施設では介護リーダーで手取り25万円の施設もあります。
日勤に優先的に配置されて夜勤が減ることで、結果的に給料が減額するという職場もあれば、介護リーダーで400万円の年収を得る施設もあります。
給料を考える上で、法人ごとの違いが大きく反映される部分であると言えるでしょう。
介護リーダーの仕事内容
仕事の内容にも幅が広いですが、多くの施設で介護リーダーが担う役割の一つがシフト作成です。
介護リーダー、介護主任、フロアリーダーなどが配置される施設なら、シフト作成を担うのは恐らく介護主任になります。
シフトを作成するというデスクワークが増えるということですが、これは介護リーダーに求められる能力によるところでもあります。
介護リーダーには介護職員をまとめることが求められます。施設長よりも介護職員一人一人について理解している必要があると言えるでしょう。
介護職員の能力をしっかり把握している人間がシフトを作成しなければ、ある日は仕事の速い職員が集中し、別の日は仕事の遅い職員が集中するなど施設運営に問題が発生することもあります。
仕事は早いがミスも多くフォローが必要な職員、時間はかかってもミスなくこなす職員、レクリエーションで輝く職員、早出を多めに入れてほしいという要望を受けている職員、夜勤が苦手な職員。
職員の個性をしっかりと把握してシフトを作れるのは、介護リーダーに求められる能力です。
誰でもできる仕事でない以上、介護リーダーに任されますし、しっかりとシフトが作れてこそ介護リーダーであると言えるのかもしれません。
他にも、会議を主催するという施設もあれば、医師や厨房との他職種連携を担う施設もあります。新規入居の面談に同席することもあれば、面接を行う施設もあるでしょう。
介護リーダーにどれだけの権限が与えられるかという部分は介護施設の特色が現れる部分になります。
介護リーダーのやりがい
介護リーダーとして働く中でのやりがいは、チームケアにあると言えるかもしれません。
2階の担当者と3階の担当者と4階の担当者が別々に働き、夕食の時間に各階の入居者が食堂に集まるようにするだけでは介護施設は上手く運営出来ません。
どこかで問題が発生することもあれば、誰かの業務が遅れることもあるのが介護施設です。
施設全体、職員全員があたかも一人の介護職員のように連携し、介護リーダーの指揮の下で高いクオリティの介護を提供することが出来れば、これほどやりがいのある介護はありません。
最初にお伝えした通り、目指すべき介護を自分で設定できると言うのも大きなやりがいです。
利用者の介護度が改善して歩けるようになる、気難しかった利用者が施設内で笑顔で過ごす様になる、介護でやりがいを感じる場面は多々ありますが、その方針を決める立場で感じるやりがいはより大きなものです。
与えられる権限と求められる機能は施設ごとに大きく異なるところも、介護リーダーの面白さかもしれないね。
介護リーダーになったら読んでおきたい本
介護福祉士全ての義務だけど、指標となるべき介護リーダーならより率先して取り組まないといけないよ。
自分が決めた方針が利用者の死期を早める結果になるかも知れない。緊張して業務にあたるべきだからね!
介護リーダーになることは介護職者にとってゴールではなく、むしろより深く介護について理解しなければならない立場に立ったと言えます。
同時に自分と利用者だけではなく職員全体、時には自分が不在の状態での職員同士の連携についても考えなければなりません。
介護リーダーになったら困ることは増える一方です。
ここでは、参考になる本をご紹介しますので、是非参考にしてみてくださいね。
実用介護事典 改訂新版 (介護ライブラリー)
介護の現場で目にする用語について、社会福祉、介護、医療、リハビリなど非常に広範囲で納められています。
800ページ以上という厚さと決して安価とは言えない値段ではありますが、あらゆる単語について網羅されたこの事典は非常に役立ちます。
自分が使う以上に、後進に貸し出すような使い方もできるかも知れません。可能であれば休憩室に設置するなども良いでしょう。
この介護ライブラリーシリーズは図解も丁寧で、後輩の育成、根拠ある介護の説明の際に役立つものばかりでどれもオススメです。
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問題解決フレームワーク大全
介護リーダーという立場では、利用者の課題を解決するための介護の手段を介護職員に説明する必要があります。
可能であれば会議などで全員で検討し、決定していくことも良いでしょう。
KJ法や5whyなどは介護の現場でもよく用いられる手法であり、課題解決手法を求めるためにフレームワークを用いることは介護ではよくあります。
介護リーダーとして会議を主催し、進行することがあるならば、フレームワークについて理解を含めることは大切であり、また非常に効果的です。
課題解決の思考法は介護を検討する以外でも、自分の課題を洗い出し介護職者としてより成熟していく上でも有効です。
思考過程を明白にしてくれるフレームワークはとても有効だよ。何となくこうした方が良いでは職員はついてこないからね。
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「できる上司」と「ダメ上司」の習慣 (アスカビジネス)
介護リーダーは介護職員にとっては上司です。部下をまとめ、教育し、信用されるという上司にとっての目指すべき姿は、まさしく介護リーダーの目指すべき姿であると言えます。
こうしたビジネス書では売り上げの低い部下などの表現があり、全てを介護に当てはめることは難しいかもしれませんが、チームを育てるために上司としての働き方を考えることはとても大切です。
部下である介護職員をまとめ、チームで介護をなし得るために、一冊は上司としてのビジネス書を参考にしましょう。
介護と同様に、介護職員に対する評価にも正解はないんだ。仕事が遅くとも利用者に寄り添った介護を提供できるか、スピーディに介護を提供できるか、どういう職員が良い職員かを決めていくのも介護リーダーになるからね。
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介護リーダーとして成長していくために
介護の職場において、介護リーダーの役割はとても大きなものです。介護を提供するうえで最も大切な部分をになっていると言っても良いでしょう。
利用者に寄り添った介護を提供するという運営方針を掲げる介護施設でも、寄り添った介護というものを定義し、実施するのは最終的には介護職者です。
介護リーダーになれば、あなたの意見が施設の全てを決定していきます。逆言えば、あなたに任せれば施設が良くなっていくと信じてもらわなければ介護リーダーにはなれませんし、介護リーダーを任せられるという事はそれだけ信頼されているという事でもあります。
期待に応え、介護リーダーとしてより良い施設にしていくために、信頼されながら、目指すべき介護をこれと決めて介護職全体で歩んでいくために、介護リーダーには多くの知識と技術、人間的魅力、決断力、判断力など多くのものが求められます。
これらすべてにしっかりと応えるために必要なのは才能でなく、自分がこれだけ重要な役割をになっているという意識、チームに資するリーダーであろうとするではないでしょうか。
辛いことも多い仕事だけど、辛さを嘆かず楽しんで介護が出来る職場で頑張って欲しいな。
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